Ryzen 7000シリーズの発表がありました。

先日、待望のRyzen 7000シリーズについてAMDから正式な発表がありました。ソケットが変わる製品となるので気になった点を見てみましょう。

まずはソケットの変更で、LGAタイプとなりました。LGAソケットはマザーボードのソケット側にコンタクトピンが並び、CPU側はピンでは無く電気的な接点のみが並んでいる。すでにIntelのCPUで広く採用されているタイプのソケットとなります。これでCPUをマザーボードから抜くときにCPUのピンを曲げて破壊する心配が少なくなりましたが、マザーボード側のソケットにCPUを落とすと、こちら側のピンが曲がるので取扱注意なのは変わりません。

LGAになった理由は自作ユーザーがよくCPUピンを曲げてしまうから、ではなく、CPU側のピンを増やすにはAM4はサイズ的に限界です。IntelのようにTDPの上限を増やそうと思ったら電力関係のピンを増やす必要が出てきてしまいますが、CPU側にピンを増やすと今よりも細く曲がりやすいピンになってしまいます。

今回、TDPの上限が170Wに増えたのはAM4ではピン数のために制限のあった電力周りが改善されたためでもあると思います。AM4のまま電源容量を増やそうとすると、CPU側に電源回路を乗せる必要が出てきてしまいますが、そのままのピンの仕様では使えないので互換性は無くなります。また、CPUに乗せた電源回路は高さが出るのと、発熱の問題もあり、さらには電源回路が場所を取るのでチップレットの数も減らさないとならなくなる。機能と電源周りを強化するとなると自然とLGAしかない、という所だと思います。

AM5ではピン数が増えて電源周りが改善されたのでTDPを大幅に引き上げました。これは安定した高クロックCPUを搭載できるのと、搭載するCPUチップレットを増やすことができるようになると思われます。もともとAM4ではターゲットのTDPが105W程度だったので、電力的にCPUチップレットを増やせず、さらにはクロックも押さえていたのだと思います。実際、最近のCPUクーラーなら空冷でも熱で性能を下げるサーマルスロットリングの発生は抑えられているので、16コアCPUなどが発熱が問題でクロックを下げていたとは思えません。

次に気になったのが、I/Oダイがシュリンクされた点です。I/OダイとはメモリコントローラーやPCI Expressなどの入出力関係がまとまったチップです。いままでこのチップはあまり先端プロセスで製造されていませんでした。今回は比較的先端プロセスで製造されたチップが使われるようです。

I/OダイはRyzenシリーズからはCPUコアに内蔵されなくなりました。それはチップレット構造を取るRyzenだとCPUチップを載せた数だけI/Oも乗ることになるのですが、メインになるCPUチップ以外のI/Oは使われることが無くなるため無駄が多くなるのです。

また、I/Oだけのチップを先端プロセスで製造すると、チップのサイズがかなり小さくなるため接続用の物理的な接点が乗せられなくなるそうです。そこで、今回はRDNA2の機能を取り入れたようです。RDNA2とはグラフィック機能のことで、今まではRyzenにグラフィックス機能があるのはノート用やAPUでしたが、AM5系CPUからはビデオカードを搭載しないシステムでも画面表示だけはできるようになるようです。

しかし、I/Oダイのサイズはそれほど大きくないのでRDNA2のコア数はあまり多くは無いでしょう。なぜならメモリコントローラーなどを省いたとしてもローエンドのグラフィックチップでさえ単体ならばかなりの大きさになるからです。Windowsデスクトップのエフェクトなど、必要最低限の機能を実現するにとどまるとみた方がいいと思います。とはいえ必要最低限の環境で起動確認できるのは自作をやるのにもありがたい機能だと思います。

今まで、I/Oダイのサイズをそれほど小さくしなかったのに、なぜ今回は一気に最先端プロセスに近づけたかというと、おそらくPCI Express5.0への対応や、USB4.0に対応するには以前と同じ製造プロセスのI/Oチップでは難しかったのではないかと思います。高いクロックに対応するには新しい製造プロセスの方が作りやすくなり、必要な大きさのチップにするためにグラフィック機能を取り込んだのでしょう。

もしかしたら、ローエンドのAMDビデオカードを搭載した場合、補助的に連動する機能が使えるようになるのではないでしょうか。APUでもそんな機能があった気がしますが、ストリーミングプロセッサー数は96か128程度と予想されるので焼け石に水という気もしますが。

上述の2点以外のトピックというと、DDR5への対応ですが、これはマーケティング的な意味の方が大きいものと思われます。AMDはソケット互換をうたっているのでマザーボードメーカー的にはマザーボードがそれほど売れません。PCパーツメーカーにしてみると互換性とはあまり歓迎する要素でも無いので、定期的にマザーボードが売れる機会を作らないことにはいけないのです。以前のAMDがあまり売れなかったのは、何もCPU性能が低いからだけでは無く、パーツメーカーからそっぽを向かれていたためラインナップが少なめだったからでもあります。

DDR5が性能的なインパクトが少ないのは、メモリコアの部分がもうずっと停滞しているからです。DRAMは電荷を蓄積してデータを保存していますが、この入出力部分は20年くらい前からほとんど性能が変わっていません。どうやって性能が上がっているかと言えば、ランダムアクセスはほぼあきらめて、まとまったブロックでCPUのキャッシュにデータを送り込んでいて、そのまとまった量が増えていったのがDDRラムの高速化の構造です。

(注釈_本来ならばDRAMの性能指標はランダムアクセス性能なはずですが、帯域というまとまったデータをやりとりできる量で示されているのはランダムアクセス性能がとっくに頭打ちとなってしまったためです。もちろんDDR5はDRAMなのでランダムアクセス可能なメモリですが、ランダムアクセスをさせるとメモリ性能の表にあるレイテンシと呼ばれる待ち時間をもろに使いビット単位のデータをやりとりする羽目になります。)

一般的なDRAMは書き込まれた瞬間からデーターが消えていくので、消える前に元のデータを読み出して再び書き込むという作業が有り、このためにメモリーアクセスが中断されます。そこで、日本のDRAMメーカーは不揮発性のRAMを研究していましたが、アメリカが韓国と組んで日本のメーカーをPC市場から撤退させてしまったため、DDR2あたりで止めるはずだったDDR系がDDR5まで伸びてしまいました。

残念なことに市場に残ったメモリメーカーの、マイクロンと韓国、台湾のメーカーはマイクロン以外は、ほぼメモリの基礎研究をしたことが無い製造だけのメーカーしか無いので、結果的にPCのメモリーは20年以上停滞したままとなってしまいました。それでもCPU側の対応で、キャッシュ階層と容量を増やしていったため、DDR3ぐらいまではごまかせていましたが、おそらくDDR5ではそろそろ限界なのではないかと思われます。

今回のAM5へのアップデートではAM4に見られた弱点が改善されています。TDPの枠の面で見ると、電源と熱設計枠が改善されたので、現在と同等のクロックを保ったままCPUチップレットを増やした構成や、クロックを大幅に増やしたバリエーションもありそうですね。

最大の問題点はRyzen7000シリーズを買うお金がedoにあるのだろうかという所。むう・・

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